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ソコロ事件は学生のイタズラか [ソコロ事件]

ソコロ事件には「学生のイタズラ」説がある。このイタズラ説は、物理学者スターリング・コルゲートが「事件はニューメキシコ工科大学の学生たちによるイタズラだった」と述べたことにより、UFO懐疑論者から強く支持されている。

コルゲート博士は事件当時(1964年)、事件現場であるソコロ近くのニューメキシコ工科大学で学長を務めていた。ノーベル化学賞受賞者であるライナス・ポーリング博士はソコロ事件に強い関心を持ち、事件についてコルゲートに問い合わせた。コルゲートが同年にポーリング宛に送った返信の中には、

'I have good indication of student who engineered hoax. Student has left. Cheers, Stirling.'
(私はイタズラをした学生をよく知っている。彼らはもういない。お元気で。スターリング)

とあり、この返信はポーリングの死後、ポーリングの書類の中から見つかった。これをUFO研究家のアンソニー・ブラガリアが2009年にネット上で発表し、ソコロ事件=イタズラ説の根拠の一つになっている。

しかし、このイタズラ説についてもいろいろと不思議な点がある。

一番の難点は、この手紙の中ではコルゲートが「イタズラをした学生」の名前も人数も一切明らかにしていないことだ。

ブラガリアはコルゲートとの最後のやり取り(2011年)もネット上に公開しているが、コルゲートはついに学生たちについて明かさなかった。ただこのやり取りからすると、コルゲートは「犯人たちの一人は私の友人だ」とブラガリアに述べていたようで、ブラガリアに対し「きみにこの事件について話すべきではなかった」とも述べている。

学長だったコルゲートが学生たちを問い詰め、大学を去ることを条件に今後一切不問に付すと約束したのかもしれない。しかし、この返信の内容やブラガリアとのやり取りだけだけでソコロ事件=イタズラと断定するのは難しい。

イタズラを告白した学生たちがいたことは確かだろうが、その告白自体イタズラという可能性もある。例えばジョンベネ事件や警察庁長官狙撃事件でも「犯人」だという男が名乗り出たが、いずれも犯人性を裏付ける証拠がなく、事件は謎のままである。

そもそも、ブラガリアらが指摘するように、工科大の学生たちがUFOを偽装して警官を欺くことは可能なのだろうか。

ここでイタズラ説の主張する気球説が問題となるが、UFO懐疑説とくればとにかく「気球説」という印象がありますね。

ニューメキシコ工科大では同大のラングミュア大気圏研究所が1960年代から気球による大気圏観測も行っており、コルゲートもブラガリアに対し「あれは気球だった」と述べている。しかし同時に「私は犯人からそれ以上のことは聞いていない」とも述べている。

ラングミュア大気圏研究所の気球実験については、1965年頃とされる写真が同研究所のホームページに公開されている(http://langmuir.nmt.edu/Storms_Above/StormsAboveCh6.html)。
socorro_baloon.jpg
ラングミュア大気圏研究所のホームページより

写真を見てもわかるが、この貧弱な気球をどうやってUFOに仕立て上げたのかと首を傾げたくなる。ザモラや近所のガソリンスタンドの定員の証言によれば、UFOは「大音量で青とオレンジの炎を出しながら時速1080マイルで飛ぶ」物体だったとされており、これを気球で偽装して見せたとすればハリウッドも顔負けのSFXである。

研究所のホームページによると、コルゲートはソコロ事件の起こった1964年にラングミュア研究所の所長になり、研究所の気球による大気圏観測にも深く関わっていたが、コルゲートが着任した当時の研究所はかなり施設が老朽化していたので、新たな寄付を得て建物を増築した。気球観測は1966年から盛んになったが、気球が嵐のたびにしぼんでしまうので、1968年からは海軍から得た牽引機を使って山の上に引っ張り上げるようにしたという。

つまり、事件当時のラングミュア研究所は貧弱な設備しかなく、気球観測自体それほど活発ではなかった。ここの気球で「空を轟音で飛ぶUFO」を仕立てるのはほぼ不可能ではないだろうか。

一方、コルゲートの前任の所長は学生たちに対してかなり厳格で、明確な規則もないまま学生たちを処断していたという。そこからすると1964年の事件当時、学生たちの中に処遇への不満や、新任所長への不安が募っていた可能性はあるだろう。それらがイタズラ事件の背景という気もするが、新任間もないコルゲートがどれだけ学生たちを把握していたのかという気もする。コルゲートと対立した一部学生がソコロ事件を口実に研究所を離れた、と言えなくもない。

ザモラも警官になる以前はニューメキシコ工科大に勤めていたとされ、職員としては厳格すぎて学生たちにはあまり好かれていなかったという(https://skeptoid.com/episodes/4582)。これもイタズラ説ではイタズラの動機とされているが、結局憶測の域を出ない。イタズラ説は「すべてニューメキシコ工科大」に帰着する説で、ここまで行くと無理からという気がする。

コルゲートもすでにこの世になく、仮にイタズラをした学生たちが名乗り出たとしても、どうやってUFOを偽装したのか明らかにならなければ、この事件の真の解明はないだろう。
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